主人公の「祖父」は、太平洋戦争下、神風特攻隊として戦死した。祖父は愛する妻のため必ず生きて帰ることを約束した。国に命を奉げた時代にあって、何よりも命を大事にし、死を避けるその姿は臆病者とさえ呼ばれた。 その祖父がなぜ特攻隊に志願し、命を落とすことになったのか。 その真相を探るため、主人公は祖父を知る仲間を訪ね歩く。戦闘機操縦に長けていたと聞けば誇らしく、臆病者といわれれば憤慨する。そんな祖父に対する主人公のめくるめく感情はさておき、何より詳細に描かれているのは、命の重さだろう。 幾多の敵機を撃墜してきた零戦。あまりに脆弱すぎた防御機能。最初から命の重さなど考えられていない設計だったのだろう。そして無情にも下され続ける特攻命令。いつ自分の番が来るのか、怯える若手乗組員と、生き続ける祖父。 祖父が命を覚悟したそのとき、一体何が起こったのか。 守るべきものは何か。そして、権力とは何か。 |