今月のいちおし!!2013年11月

くちづけ

著者 宅間孝行
発行 幻冬舎 1,500円+税




田中澄代

 神さま、もう少しだけ一緒にいさせて―。
 7歳の心のまま大人になったマコ。最愛の父“いっぽん”とずっと一緒にいるはずだった。マコが生まれてから妻をなくしたいっぽんは、娘と二人で生活することが精一杯で、きちんとした仕事に就けなかった。知的障害者の自立支援を目的としたグループホーム『ひまわり荘』へ父娘で身を寄せ、いっぽんはボランティアスタッフとして働き始める。マコは、いっぽんの心配をよそに、ひまわり荘で温かい仲間たちと不安なく平和な日々を過ごした。
 いっぽんは肝臓癌の診断を受けていた。体調は日に日に悪化していき、この先マコの生きるすべを案じる。浮浪者にも犯罪者にもなってほしくないという強い思いと、一緒にいたいけど一緒にいられない現実に心を痛める。
 グループホームから施設への入所を試みるも、マコは大好きないっぽんと離れることなどできない。「こんなグループホームがあればなあ~」と、いっぽん。
 余命3ヶ月を宣告された父と知的障害の娘。なぜ、いっぽんは自分の手で最愛の娘マコを…。

 

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