2014年4月27日、FCバルセロナに所属するブラジル人選手のダニエウ・アウベスに対して、相手チームのサポーターからバナナが投げ込まれた。バナナを投げ入れてプレーしている選手を侮辱する行為は黒人差別の常套手段だ。ダニエウ・アウベスは投げ込まれたバナナを拾い上げると、口の中に放り込んだ。 サッカーの世界には人種差別が蔓延している。古くはフランス代表だったリリアン・テュラムやクリスティアン・カランブー、最近では、エトー、バロテッリ、ボアテングなどの世界を代表する選手たち、日本人選手も、スコットランドで活躍した中村俊輔や現在ベルギーでプレーしている川島英嗣なども差別を受けている。本書では、この20年くらいの間に起きた差別に関わる事件、そして、選手、クラブ、観客などサッカー界は差別とどのように闘ってきたかが紹介されている。 冒頭のダニエウ・アウベスの行為は世界中で称賛され、有名なサッカー選手はバナナを食べているシーンを撮影し、人種差別反対のメッセージを発信した。この動きが世界中で人種差別について考える契機になるのではないかと思う。しかし、著者はダニエウ・アウベスの行為やその後の動きについて賞賛しながらも、逆の意見も紹介している。「何も面白がるようなことじゃないし、まるで誰もがこう言っているようだ、『何も変えることはできないから、笑い飛ばしてしまおう』と」。 果たして人種差別はなくせるのか。日本では、8月23日に行われたJリーグの試合でピッチに向かってバナナを振るという行為が行われた。“スタジアムで起きていることは社会でも起きている”、まさに今の日本を象徴するような事件だと感じた。 |