今月のいちおし!!2014年11月

自閉症の僕が飛び跳ねる理由
会話のできない中学生がつづる内なる声

著者 東田直樹
発行 (株)エスコアール出版部 1,600円+税




福寿みどり

 「架橋」に原稿を執筆してもらいたくて、この本の著者である東田さんに連絡を取った。「今は忙しいので…」と断られた。8月、東田さんからNHKで特集番組があるので見てほしいとの連絡があった。テレビを見て、びっくりした。本を読んで勝手にイメージしていた世界とはちがう現実がそこにあった。
 この本は、現在、世界のいろいろな言葉に翻訳されて売られている。アメリカ、カナダでもベストセラーになったほどだ。そのきっかけは、一人の自閉症の息子をもつお父さんが、この本を読んだことに始まる。普通に返事をするだけでも、「はい」と「いいえ」を間違えてしまったり、でもそれが訂正できなかったり。「この子はひとりが好きだ」と言われるたび、仲間外れにされた寂しい気分を覚えたり。この本を読んで、その父親は「まるで息子と会話しているようだった。息子のとる不可解な行動を理解することができた。」という。この夏、お父さんは、イギリスからやってきて、東田さんと対面、訊きたかったことを直接質問していた。
 彼は、自分のことを「まるで壊れたロボットを操縦しているようなものだ」という。いろいろなつらさをかかえながら、でも自分のために、周りの人が苦しんでいるのが一番つらいと言い、みんなの笑顔で幸せになれるという、東田さんは素敵な人だと思った。

 

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