自分の学生時代のことを考えてみた。当時、部落問題について何を学んだのかを思い出してみると、日本史で江戸時代の身分制度のところで習ったなあ…、全校だったか学年別だったか、講堂に集められて古い映画を見たなあ…、その程度だ。 本書は、著者が部落出身の若者たちに、どのように部落問題と出合い、どのような経験をし、いまどのようなことを考えているのか、そしてどのように未来を展望しているのかについてインタビューを行い、まとめられたものである。 インタビューに応えている若者たちは、私とほぼ同じような世代が多かった。生い立ち、生まれ育った場所、生き方、考え方など、もちろんそれぞれに違いはあるが、共通点は若くして否応なく部落問題と向きあっていること。両親から話を聞いて、学校の同和教育で、友達との会話を通して、など、さまざまな方法で部落差別があることを知り、自分自身の未来を考え、自分の後に続く世代についても思いを巡らせるようになっている。ある人は、「自分の子どもが差別をするようになってしまうことが恐ろしい」「だから自分の頭でなにが正しいのか、なにがいけないのかを判断して生きていってほしい」との願いをかけている。部落問題に関わることを通して、部落差別だけではない、さまざまな差別を生み出し続けている社会に生きているという視点が得られたのだと思う。 もう一つ感じた共通点は、それぞれが部落問題との関わりを通して、豊かなつながりを得て、それを持ち続けているということ。そこに少しうらやましさを感じた。 |