センター職員今月のいちおし!(4月号)

人新世の「資本論」

 


斎藤幸平 著

集英社新書

1,020円+税

田川朋博


 最近、季節がおかしいと感じることが多くなった。今年の桜もずいぶん早く咲いたように感じた。2020年6月には、シベリアで気温が38度に達したという。

 地球規模の気候変動が大きな問題になっている。本書は、主にこの問題を通して、資本主義の是非を問うている。

 資本主義は、収奪と負荷の外部化・転嫁の歴史だ。自らの矛盾をどこか遠いところへと転化し、問題解決の先送りを繰り返してきた。私たちが環境保護のために使っているエコバッグを他国で大量生産するというような。“遠いところ”とは、空間的に言えば、例えば「グローバル・サウス」(南半球の国々のようなグローバル化によって被害を受ける領域並びにその住民)であり、時間的に言えば、将来世代になる。

 SDGsは大衆のアヘンである!

 気候変動への危機感から、「SDGsはアリバイ作りのようなものであり、目下の危機から目を背けさせる効果しかない」と本書は冒頭で訴えている。このSDGsへの評価に対する賛否はあろうが、以前の状態に戻れなくなる地点(ポイント・オブ・ノーリターン)は近づいている。資本主義は、格差と矛盾を生み出してきた。現代の世界中の人々が幸せに暮らしていくために、将来世代のために、今の社会をどのようにしていくべきか、一人ひとりが考えていくべき時が来ていると感じた。

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