今月のいちおし!!2010年8月

何が不自由で、どちらが自由か
~ちがくことこそばんざい~

著者 牧口 一二
発行 河合出版(735円+税)




川上 学

 

私は高校1年の時から“メガネ” をかけている。風邪をひいてマスクをしたり、熱い物を食べると曇ってしまう、はずすと視界がぼやけてしまう、朝起きた時「メガネ、メガネ…」になる等々、大げさと言われるかもしれないが、不自由なことを挙げればきりがない。著者は“松葉杖”を使っている。本人曰く、「免許皆伝の腕前で、色違い8組を服装に合わせて自由にコーディネートし、生活に不自由はない」と。

本書は「障害」を個性だと考える著者が、心や体のどこかに「障害」のあるひと=「障害者」と呼ぶことについて、独自の視点で社会の矛盾や疑問を指摘しながら、豊かな体験をもとに「生かされている」ことの意味や「本当の自立」について問い直す作品となっている。

身勝手な解釈かもしれないが、ひとは一人ひとり顔が違うように、性格や考え方もそれぞれ異なっており、個々の多様性を自己とは異なる「他者」として認め合い、尊重する思いがまずは大切ではないだろうか。「理解するとは、わかるということではなく、他からの刺激を受けて自己変革することである」ということばを聞いたことがある。つい当たり前と考えてしまう社会の常識や知識、価値観だけを重視して理解したと満足せず、他者への開かれた心を自己の責任ある行為へと変革していける自分でありたいと思う。

 

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