今月のいちおし!!2015年11月

「生きづらさ」について 貧困、アイデンティティ、ナショナリズム

著者 雨宮処凛、菅野捻人
発行 光文社新書 760円+税




衣笠尚貴

 作家の雨宮処凛さんと大学教員でもある菅野捻人さんが、日本の抱える問題について対談をする。本書の主題である「生きづらさ」は、大なり小なり、そして多種多様であるにせよ、多くの人々が抱えるものであるだろうが、その根本原因はなんなのだろうか。
 雨宮さんかこう指摘する。「誰かと出会うとき『最悪の出会い方』をしていると思う」と。さらに、「いまのこの国には、『否定する言葉』は溢れていますが、『肯定する言葉』はあまりにも少ない。そこで多くの人が傷つき、疲弊している」と続ける。
 共同体が崩壊していくなかにあって、無条件に自らを受容してくれるものはなくなり、自分の居場所を確保するために、自らを他者に認めてもらうために、求められるコミュニケーションはより高度になってきていることも指摘されている。そこで息苦しさを感じている人が多くいることと、インターネットのなかに繋がりを求める人たちの存在が増えていることは、必ずしも無関係ではないだろう。
 やはり求めらるのは「根本的な社会のあり方の変化」なのだろうか。非常に多くの気づきを与えられる著書である。

 

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