センター職員の今月のいちおし

車輪の上

著者 乙武洋匡
発行 講談社 1,500円+税




田中澄代

車椅子ホストの挫折と成長を描いた青春小説「車輪の上」。いつの日曜日だっただろうか…新聞の読書欄で目にした瞬間、頭の中で様々な想像をし、手にした一冊。

主人公は車椅子ホストのシゲノブ。大学卒業後、就職が決まらぬまま上京し、歌舞伎町でホストになった。

彼の働くホストクラブでは、障害、LGBT、東大卒…と様々なレッテルを貼られた者たちが自分の居場所を探し続けながら、ホストをしている。それは、自分の殻を破るための自分との戦いであり、世間や社会への挑戦でもあった。もちろん彼自身も、客から障害者は席に来るなと言われたり、マスコミに取材されたり、「障害者」というレッテルに振り回されながら、ホスト業に精を出す。そしてシゲノブは、ここで出会う人たちと過ごすうちに、車いすに乗っている自分に囚われていたこと、「世間から冷ややかな目で見られているかもしれない」とか「蔑まれているかもしれない」とか、自分で見えない壁を作り、限界を作っていたことに気づいていく。

 自分の人生を生きることの本質に迫りながらも、小説というスタイルになっていて、読みやすく、障害者問題について再考する機会になった。

 

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