今月のいちおし!!2016年7月

うつくしい人

著者 西 加奈子
発行 幻冬舎 535円+税




福壽 みどり

 時々、突然なんの前触れもなく、ものすごく落ち込み、沈む時がある。そんな時には、周りの人みんな幸せそうにキラキラ輝いて見えて、自分一人、誰にも必要とされていない、誰の役にも立てない、世界一みじめな人間に思えてきて…。そうなってくると、もうすべてを悪い方に、悪い方に、ネガティブにしか考えられなくなる。そして、突如、なんでかよくわからないけど浮上し、なにごともなかったかのように日常が進んでいく。そう、落ち込む時は、とことん落ち込めばいい。急浮上できなくても、きっかけがなくても、なんとなく元通りになれば生きていける。
 この本を読んで、実はかなりイライラしながら読んだのだけれど、それには、きっといくつかの理由があったのだと思う。読み終わって、自分が幸せかどうか決めるのは、本来自分のはずなのに、いったい誰の評価を気にして生きているのだろうと、改めて考え直した。シアワセの形はそれぞれで、それが世間のシアワセの基準とずれていても、自分らしく生きていける。それが「人権」と言葉で言っても、やはり世の中のシアワセ基準に引っ張られる自分。そして、足りない部分にばかり目がいく。まあ、でもそれも含めて、折り合いをつけながら、自分らしく生きることを考えていこう。

 

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